チューリップ
俺が席に着いたのを見て、女は自己紹介を始めた。
「では改めまして、美山梨華です!
これから1年間よろしくお願いします!!!」
美山梨華…。
いつもなら聞き流す担任の名前もなぜか頭に入ってしまった。
しかし次の瞬間、クラスの空気は女の言葉によって凍てついた。
「それにしても、最近は風邪がはやってるの?
欠席の方がいっぱいいるけど…。」
女は不思議そうに教室を見回している。
この女は何にも聞かされていないようだ。
このクラスは普通のクラスじゃない。
この学校の教師にとって、邪魔になる、出来の悪い奴らが集められてるクラスだ。
出席率が悪い、反抗的、卒業すらできない、そんな奴らの集団。
3年6組の担任になるってことは、問題児の見張り役をするってこと。
そんなことも知らずに担任を任されてかわいそうな奴。
今までの奴らはみんな、ストレスや過労で辞めてった。