チューリップ


今までありがとう?

思い出?



違う。

まだ始まってもいない。


俺はまだ何にも伝えてねぇじゃん。




気づけば足が動いていた。


おさまることを知らない暑さの中、俺は全速力で見慣れた道を駆け抜けた。




「2つに破かれて、病院のゴミ箱の中に入ってた」

及川の言葉が、

「望みのない恋」

陽介の言葉が、

俺の頭をよぎる。



例えもう梨華の心が決まっていたとしたって

俺には関係ない。



俺はただ未知の結果をおそれて

俺が傷つくのが怖くて

逃げていたんだ。



まだお前に伝えていなかった。




望みのない恋なんかじゃない


終わったことなんかじゃない




今度は俺から



お前に伝えるから。





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