チューリップ
マンションの入り口に入ろうとしている梨華が足を止めた。



少し距離のある俺たちの間はまるでほかの世界と切り離されたかのように感じた。




想いを伝えてしまえば

梨華を失うかもしれない。



でも、伝えなければ俺は一生後悔する。





梨華に会えてよかった、と

ありがとう、と

愛してる、と


今度は俺が告げるんだ。





「梨華、聞いてほしいことがあるんだ。




これ…」



俺は手に握りしめていた物を梨華に見せる。


「それは…」


少し離れていても梨華が息をのむのがわかった。


「及川にもらったんだ。



勝手に終わりにすんなよ。


俺はまだ何もお前に伝えてねぇ。」
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