チューリップ
過去 〜梨華〜
教室は不気味なほど静まりかえっている。
あるのは私の涙の音と突然降り出した雨の音だけ。
止めどなく流れる涙をどうしても止めることができなかった。
『クズ』
『邪魔』
『可哀想』
あの子が言った言葉は私が前に使っていた言葉だった。
あの子がこの言葉を使った瞬間、昔の自分が頭に浮かんできた。
あまりにも自分と似ていて、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
「今日は解散にしよう。
いいよね?梨華ちゃん?」
ある1人の生徒が重い沈黙を破った。
ゆっくりと顔を上げると優しそうに微笑む男子生徒が私を見ている。彼はあの子の隣に座っていた子で、茶色い髪にピアスもつけていてすごく大人っぽい。
私は小さくうなずいた。すると私に答えるようにうなずいてみんなを帰し始めた。
名前すら知らない生徒を傷つけて
生徒の前で涙を流して
勝手に過去を思い出して愕然としてしまった。
昔私がいた闇の中にいる生徒に直面して、私はふるえが止まらなかった。
思い出したくない過去を
思い出してしまった。