チューリップ
リュウはすごいよ。
こんなに大きな家で、毎日1人で生きてきたんだもん。
孤独に襲われるときも、過去を羨むときも、絶対にあったはず。
でも、リュウは弱かったんだ。
過去を見ないで生きることを私は強いとは思わない。
弱いが故に強く見せるしかなかったんだ。
まるで、過去を消すように。
昨日私を強く抱きしめたリュウの腕には、リュウの苦しみの跡があった。
前に夏になりかけた7月、まだ長袖を着ていたリュウに違和感を覚えたことがあった。
その跡を、必死に埋もらせてたんだね。
その傷はもう消えないけれど
それを強さの跡にすればいい。
その傷は
醜いものでも
恥じるものでも
ないんだから。