チューリップ
そういえば…。

5月に初めてこの学校に来たときも、こうして茉莉と別れてから理事長室へ入った。


その後、理事長に約束を誓った。

リュウや陽介君、3年6組の子たちと出会った。
リュウの闇に、

自分の過去に苦しんだ。


そして、最高の仲間と
最愛の人を築いたんだ。


ここに来てからの日々の全てが今の私を作ってる。



頬がゆるむのを感じながら理事長室へ入ると、あのときと変わらない理事長の笑顔があった。




「呼び出してごめんね。


ふふ。なんか思い出すわね。あなたがここに来たときのこと。」


「はい。私もです。

本当にこの学校に来れてよかった。」


私がそう言うと理事長は柔らかい笑みを浮かべてうなずいた。



「今日はね、頼みたいことがあるの。


来週から入院してしまう教頭先生に変わって新しく先生をお迎えすることは会議でお話したじゃない?」


…言われてみればそんなことも言われたような…。


「…まぁいいわ。
その先生の希望でね、教頭に就任する前に、生徒たちと交流したいんですって。それで、今週だけ3年6組の副担任として入っていただこうと思ってるの。


どうかしら?同時に美山先生に学校の案内とか説明もしてもらうことになるんだけど…」


3年6組に新しい先生…?



「是非お願いします!!うちのクラスの子たちはみんなひたむきでいい子達だし、とてもいい経験になると思います!」


なんか楽しそう!

それに、最近皆すごく社交的になってきたし、雰囲気も明るくなってきてよかったんだけど、仲間意識強くなりすぎかなーって思ってたから。


やったねー。



「よかったわ。じゃあよろしくね。

岩城弘泰(イワキヒロヤス)先生と言うんだけれど、前は教育委員会の運営にも携わっていた方でね、いろいろ勉強になると思うわ。」


「そうなんですか!失態を見せないように頑張ります…。」


「そんなに堅くならなくて平気よ。気さくで話しやすいと…」

『コンコン…』



理事長の言葉を遮るように、部屋の扉から重い扉を叩く鈍い音が聞こえた。




「失礼します。」
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