チューリップ
ふと理事長室の厚くて大きい扉が大きな音を立てながら開かれた。
「きっと受けてくれるだろうと思って私がもうお呼びしといたのよ。
こちらが今お話してた岩城先生よ。」
扉から入ってきたのは黒いスーツをキレイに着こなしている中年の男性。
理事長の言葉に岩城先生は軽く微笑み会釈をした。
確かにすごく清潔で堅実な雰囲気はするけれど、笑顔がなんだか優しくて無意識に私も会釈をしていた。
「おはようございます。
私の我が儘で今日からお世話になりますが、よろしくお願いします。」
岩城先生は私の顔を見るなり、低くてでも暖かい声で言った。
まさにダンディという感じで、思わず聞きほれてしまった。
「み、美山梨華です!こちらこそ私達のクラスにいらっしゃってもらえるなんて……ありがとうございます!!」
深々と頭を下げてからもう一度岩城先生の顔を見ると先生はなぜか必死に笑いをこらえてるようだった。
「ふふ。なんだかお互い印象はいいみたいね。
岩城先生には6組のHRと美山先生の英語の授業を見ていただきます。
それでは今日から2人ともお願いしますね。」
「はい!」
「はい。お願いします。」
私と岩城先生は理事長に見送られながら部屋を後にした。
この出会いが
後に大きな波乱をもたらすことを
このときの私はまだ知らない。