チューリップ


黄色のチューリップも


ピンクのチューリップも


赤いチューリップも



まるで下を見ることを知らないように、全てがまっすぐに空に向かって咲き誇っていた。



「チューリップはどんな色のものも、どんな大きさのものも、絶対に上だけを向いて花を咲かすから…。


見てると元気が出てくるんです。」


「素晴らしいですね。」


「はい。すごいですよね。」


「まるであなたのようですね。」


「はい。………え!?あ、いや…ありがとうございます。」




梨華はまるでチューリップみたいね



これは私が未だに覚えている数少ない母から言われた言葉。




『梨華?おっきくなって、イヤなことや辛いことがたくさんできたとしても、下を向いちゃだめだよ?』

『うん!!』

『梨華はまるでチューリップみたいね。』

『何でー?』

『いつも上を見て、ママ達に笑顔を見せてくれる。』

『うれしい?』

『とってもうれしい。』
『じゃあ梨華これからもずっと笑う!』

『ハハハ!ありがとう梨華。』







「そろそろ8時半になります。一度職員室に戻ってから教室に行きましょう。」


「はい。」



私は思わずこぼれてしまう笑みを隠すように岩城先生の少し前を歩いた。
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