チューリップ
男の人はよく見ると、みんなを帰してくれた大人っぽい子だった。



私を運んでくれたみたい。





「ご、ごめんなさい!!!



教室で昔を思い出しちゃって!それで気が動転して。それで…。」





頭がはっきりしてくるのと同時に嫌な記憶も戻ってくる。




乗り越えたはずだった過去に飲み込まれそうになって、息が苦しくなってきた。





静かな部屋に私の荒い呼吸が響く。





「梨華ちゃん。落ち着いて。



今君は1人じゃない。


俺がいるから。」



男の人は私の頭をそっとなでた。



手の温もりやすごく大人っぽく暖かい雰囲気を感じて、冷たくなっていた体が暖まっていくのがわかった。


少しすると呼吸も落ち着いてきた。




「ありがとう。


もう大丈夫。いろいろ迷惑かけたみたいで本当にごめんなさい。」




私がそう言うと、男の人は安心したように微笑んだ。

少しガラの悪い見た目とは裏腹にとっても暖かく笑った。




「いえいえ。気にしなくて大丈夫だよ。すごい軽かったし。




あ、俺は岡本陽介(ヨウスケ)って言うんだ♪陽介って呼んでね。



ちなみにあいつは川崎隆太。みんなからはリュウって呼ばれてるよ。




今お茶取ってくるから待っててね。」




陽介君は私にそう言うと立ち上がって部屋を出ていった。
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