チューリップ
「…夏休みからきちんと気持ちを切り替えて……」
体育館には生徒指導部長と9月に入ってもやまない蝉の声が響き続けている。
「あっつー…。あの人の話長いんだよねー。」
隣でぼやく茉莉の声が耳をかする。
でもそれらは今の私には雑音でしかなかった。
頭にこびりついて離れない。
リュウの軽蔑したような目が
私の頭を鮮明に駆けめぐる。
私の前のイスに座っている岩城先生の背中がぼんやりと頭に移る。
逃げたくなる。
体が震えそうになる。
恐怖に押し倒されそうになる。
そんなのはもう終わりだ。
トラウマにおびえてる場合じゃない。
この人の気持ちを
伝えなくちゃ。