チューリップ
体育館のざわつきで始業式が終わるのがわかった。


周りを見渡すと先生達がみんな立ち始めていた。


「じゃーな梨華！」

「また明日！」


このまま流れ解散となる生徒達は私たちに手のひらを向ける。


「また明日ね！さようなら！」


彼らに笑顔を向けて手を振る。



「梨華、陽介君とリュウいた？さぼり？」


生徒がみんないなくなって、先生達は誰が声をかけるわけでもなく年功序列に体育館を出ていく。

茉莉の問いかけに言葉が詰まる。


どんな気持ちでいるんだろう…？

今、何を想ってる？



茉莉に返事をしようとしたとき、他の先生と話をしていた岩城先生が振り返った。



「お話したいことがあるので、この後いいですか？」



その表情には笑みが浮かんでいたけれど…目が笑ってない。


私も精一杯の笑顔を作る。


「もちろんです。」


「では、一度理事長室によりたいので、その後でも平気ですか？」

「お待ちしてます。」


そう返事をすると岩城先生は前を向いて再び歩き出した。



「爽やかー！いいねぇあんなイケメンおじ様が来て！」


「うん。そうだね。」


茉莉にはまた後で話そう。



今は、岩城先生の真意を聞かなくちゃ。
< 173 / 265 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop