チューリップ
岩城先生は黙って私の話を聞いていた。


反論することも
うなずくこともなく、
ただまっすぐに私を見ていた。


「それでも、すべてを乗り越えたわけではありません。


ここからはあなたの力が必要なんです。



リュウと、自分のしたこと、あなたが向き合う番です。」





「……あの子が…私と向き合った…?」



私の話を聞き終えると、先生はようやく絞り出すように声を発した。


目がほのかに赤くなっている。




「ずっと、わからなかったんです。


あの子が何を求めているのかが…」
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