チューリップ
部屋に1人残された私は、改めて陽介君の部屋を見渡した。




部屋は落ち着く広さで、黒と白の必要最低限の家具しか置いていない。






私はふとあるものに目をとめた。



それは机の上に飾ってあった写真たて。
写真には2人の男子生徒が写っていて、無邪気に笑っている。背景には見たことのないグラウンドがあって、1人は制服、もう1人はユニフォームっぽいものを着ている。






多分制服の人の方は、今よりずっと若くて髪の色も今の茶髪ではなく黒いけど陽介君だ。





もう1人は





もしかして…









「その写真は俺とリュウだよ。



俺が中3でリュウが中1。」




気づけば陽介君がお茶の入ったグラスを持って立っていた。


陽介君は私にお茶を差し出すと、写真たてを私に見えやすいように置き直してくれた。




「リュウ、今とは別人だよね。


髪も真っ黒だし、ピアスだってあけてないし、なによりこんな顔、今では絶対にしない。」





やっぱりリュウなんだ。くっきりとした目鼻立ちや、少し日に焼けているところは今と変わってない。




でも陽介君が言うように、リュウがこんな笑い方をするなんて、私には全く想像がつかない。
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