チューリップ
取り戻した絆 〜梨華〜
あぁ…私は
なんてバカなんだろう。
昨日初めて岩城先生の想いを聞いた。
思えばリュウや陽介君からしか、リュウのお父さん、つまり岩城先生の話を聞いてなかった。
完璧にリュウの父という人物に対して、人物像を勝手に作り上げてた。
最悪だ…
教師として以前に、人として最低だ…
「……美山先生!?」
「…あはい!!」
大きな声で勢いよく飛び上がる。
ヤバい…職員室でこんな自虐に走ってたなんて…
これから授業なのに…
「大丈夫…ですか?」
しかも目の前には心配そうに眉を寄せる岩城先生本人。
「大丈夫です。すいませんぼーっとしてて…。」
「いえ…、これ今度のHRで使う資料です。」
岩城先生はまだ少し眉間にしわをよせたまま微笑む。
「そろそろ時間ですよね。」
「そうですね。教室に移動しましょう。」
「はい。」
本人に気使わせてる…。
はぁ…。
私は暗い気分を振り切るように勢いよく立ち上がって6組の教室へ向かった。