チューリップ
「リュウとは小学生の時から仲がよかったんだ。リュウはすごく目立ってて、2個年が離れててもリュウのことを知らない人はいなかった。
リュウが小3の時、俺の友達がリュウを呼び出してるのを見つけて、助けたのがきっかけで一緒にいるようになったんだ。
もちろん同じ中学に行ったし、リュウは得意だったサッカー部に入って、毎日楽しそうだった。
変わってしまったのは高1の春。
そのときからリュウは心から笑わなくなってしまったんだ。」
陽介君の顔がゆがんだのがわかった。
私はもう相づちすら打てなくて、ただ話を聞くことに没頭した。
「リュウの父親は小さい頃からあんまり家にいなくて、リュウは母親に育てられたんだ。
その母親が亡くなったんだ。極度のストレスによる自殺。
母親の死を不思議に思ったリュウは父親を問いつめた。母親の死の真相を。」
陽介君の目に涙があふれている。表情はもっと険しくなって、苦しそう。
きっとそれほど、リュウが抱えた心の傷は深かったんだ。
いつの間にか私の手も震えていた。