チューリップ
梨華は早歩きで俺を抜かして前をスタスタ歩き始めた。
何怒ってんだか…。
「りかー?」
「何ー?」
いつもより低い声で返事をして振り返る。
「忘れてねぇ?」
俺は手を梨華の方へ差し出す。
「…しょーがないなっ!」
顔にやけてますよ?
いつものように手をつないで歩く。
小さな梨華の手を握ると、なんか気持ちが強くなる。
教師と生徒だけど
俺のがバカだけど
こいつは俺が守るから。
小さな体で少し早く社会にでちまったこいつを
醜いものから守る、守れる。
本気でそう思っていた。
……ごめん。
また、守ってやれなくて。
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