チューリップ
「俺もその場にいたんだけど、今でも鮮明に覚えてる。俺でさえたまに夢でうなされるほど…。
リュウが母親の話をし始めた瞬間に、父親は
リュウに、近くにあった包丁を投げつけたんだ。」
包丁を投げつける?
私はあふれてくる涙を止められず、涙がベッドに落ちた。
実の父親から包丁を投げられる気持ちなんて、きっと本人にしかわからない。
リュウにしか…。
「リュウの父親はリュウのことを邪魔だと思ってたんだ。母親の死さえもリュウのせいだと勝手に決めつけていた。
幸い、包丁はかすった程度で腕を何針か縫うだけですんだんだど、リュウの心の傷は治らなかった。
今でもしっかりと心の傷は残ってる。
それからリュウは何に対しても無気力になった。見た目も雰囲気も変わって今のようになった。
サッカーもやめて、人に壁を作って生きていくようになったんだ。
そのときから俺は心に誓ったんだ。
俺はリュウの近くにいる。
リュウを裏切らないと。」