チューリップ




「俺もその場にいたんだけど、今でも鮮明に覚えてる。俺でさえたまに夢でうなされるほど…。





リュウが母親の話をし始めた瞬間に、父親は











リュウに、近くにあった包丁を投げつけたんだ。」









包丁を投げつける?






私はあふれてくる涙を止められず、涙がベッドに落ちた。







実の父親から包丁を投げられる気持ちなんて、きっと本人にしかわからない。



リュウにしか…。




「リュウの父親はリュウのことを邪魔だと思ってたんだ。母親の死さえもリュウのせいだと勝手に決めつけていた。







幸い、包丁はかすった程度で腕を何針か縫うだけですんだんだど、リュウの心の傷は治らなかった。









今でもしっかりと心の傷は残ってる。










それからリュウは何に対しても無気力になった。見た目も雰囲気も変わって今のようになった。




サッカーもやめて、人に壁を作って生きていくようになったんだ。







そのときから俺は心に誓ったんだ。



俺はリュウの近くにいる。


リュウを裏切らないと。」
< 21 / 265 >

この作品をシェア

pagetop