チューリップ
教室が赤く染まって、そしてどんどん暗闇に飲まれていく中で、俺は愛しい人を待ち続けた。


来ないことはわかっていても、あいつを置いて帰るなんてどうしても俺にはできない。




期待してない?


そんなわけねぇ。

いつか…また…
あの愛しい笑顔を見せてくれる



俺はずっと、願っていた。





机に伏せて目を閉じる。



浮かんでくるのはただ1人だけ。



こんなに1人の人間について考えられるなんて思わなかった。



笑った顔

泣いてる顔

怒った顔

恥ずかしがってる顔

俺らを見ていた優しい顔


むかつくくらいに
まだお前は俺の中にいるよ



お前の中に、もう俺はいないのか…?




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