チューリップ



ゆっくり顔を上げると窓の外は真っ暗で、夜になると灯る外灯が学校を照らしていた。





9時3分…



時計を見てため息をつく。


密かに期待していた

この現実にがっかりしてる

情けない自分に腹が立つ。




机の横にかけていた鞄を力ずくでとって立ち上がる。






「……はっ」


また…

もう笑うしかねぇだろ…。


「何でいるんだよ…」



窓の外には、
1人の人影がはっきりと映っている。



ガラス越しに見えたあいつの姿に体はまた反応するんだ。




足に力が入って、窓から勢いよく離れようとした
その瞬間…



体の血の気が引いたのがわかった。





梨華の隣で

もう1人の男が

光に照らし出された。


2人の影が時折重なりながら、校門へと進んでいる。




「そーいうことか…」



俺の虚しい声と壁にもたれ掛かる音が夜の教室に響いた。



隣にいたやつが何なのか、誰なのかはわかんねぇけど


俺の中で何かが動いた。





もう、待つのはやめよう。


そんなのはもう意味がねぇ。








今度は俺が


あいつを追いかける。






俺が梨華を、愛し続ける。





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