チューリップ




私は言葉が出なかった。





それはリュウを哀れむとか可哀想とかそんな簡単な感情からではなかった。










リュウの壮絶な過去への恐怖。





乗り越えなければいけない壁の高さ。





そして




よみがえる自分の過去への拒絶感。








リュウの過去を聞いて心に満ちてきたものはそんな感情だった。








泣きたいのに



涙が出てこなかった。















沈黙が続く部屋に、いっそう強くなっている雨音が響いている。





この雨はやむのだろうか?


あがることはあるのだろうか?



そんな疑問さえ浮かんでくるほど、激しく雨がすべてを叩いた。








まるで



私たちが立ち上がることを



拒むように…。
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