チューリップ
目的地の屋上についてゆっくり梨華の手を離した。
梨華は何も言わず俺に背を向けた。
こんな小さな体で全部を背負うとしたのか…?
俺たちの分の痛みまで1人で受け止めようとしたのか…?
「……リュウ…。」
俺は後ろからそっと梨華を包み込んだ。
俺の腕の中にすっぽりとおさまった梨華の体は小刻みに震えていて、俺を呼ぶ声も消えてしまいそうなほど儚いものだった。
「…リュウ、駄目だよ…。駄目なの…。」
お願いだから1人で背負わないでくれよ。
お前の痛みを分けてくれ。
「もう、大丈夫だから。
お前の想いは、伝わったから。
ありがとな。」
梨華はもう何も言わず、ただ大粒の滴を静かに流し続けた。
梨華は俺を、俺たちを守ってたんだ。
自分の身を投げ出してまで…。
きっと、卑劣で汚らしい奴にすべてを握られた。
その代償だったんだろ?
俺と、陽介と茉莉と
離れなくちゃいけなかった
大切なものを傷つけなくちゃいけなかった
多分、それがすべてを知った奴からの
教師としてのお前への生きるための条件だったんだ。