チューリップ
「お待たせ!」
放課後、教室で自習していた俺に笑顔とともに愛しい人の声が浴びせられる。
俺は梨華に微笑んで問題集とノートと筆箱と耳に入れていたiPodを鞄に入れて立ち上がった。
「やっぱり梨華とリュウはそうでなくちゃね!」
「うんうん!」
及川も仕事を終え陽介のところへ来ている。
そして、いつものように4人で歩き出す。
俺と陽介は久々に授業をサボって屋上に行っていた。もちろん、梨華を襲っていた事態を伝えるために。
及川にも梨華が伝えたようで、さっき廊下で会ったときも涙目で背中をバシバシ叩かれた。
「じゃ、帰るか。」
「そうだね。」
「ひっさびさの4人だねー!」
「…あ!!」
歩きだそうとした俺らを静止させるように梨華の声が教室に響く。
「定期!職員室の机に置いて来ちゃった!
取ってくるね!ごめん、校門で待ってて!」
梨華は顔の前であわせてそう言うと俺たちに背中を向けて走り出した。
「梨華!
気をつけろよ。」
「うん、ありがとう。」
梨華は少しはにかんでからまた走り出した。