チューリップ
「お邪魔しました。本当にいろいろありがとう。
リュウのことも、話してくれてありがとう。」
あれからしばらくして気持ちが落ち着いたため、私は帰ることにした。
先生初日に、こんなに生徒に迷惑をかける人は私くらいだと思う。
「いえいえ。こちらこそありがとう。
実はね、朝の理事長とのやりとり見てたんだ。
そのときから今までの最悪な担任とは違うって思ってた。
梨華ちゃん、きっといい先生になるよ。
リュウのことも見捨てないであげてね?」
陽介君は笑顔でそう言ってくれた。
見られてたなんて全く気づかなかったけど、陽介君に言われると自信が出てくる。
陽介君は私よりも何倍も何倍も大人で優しい人だと今日1日で身を持ってわかった。
私も陽介君みたいに強くならなくちゃ!
「もちろん!リュウだけじゃなくて、3年6組全員とわかり合いたいの。
今での先生がどうだったのかはわからないけど、私は絶対に生徒を見捨てたりなんかしないから。
じゃあ、また明日学校で。
本当にありがとうございました。」
「うん。気をつけてね。」
私は軽く頭を下げて陽介君の家を出た。
陽介君はマンションに住んでるみたい。私もマンションに住んでいるけど、私のところより高級そうなマンション。
いつの間にかここにいたから、ここがマンションだということもどこなのかも知らなかった。
陽介君は私を送ってくれると言ったけど断って、地図を書いてもらった。
陽介君に迷惑がかかるからでももちろんあるけど、1人になって考えたかった。
リュウのことも
自分の過去も。