チューリップ
冷めた目で木津先生を見ていたリュウの視線が私に移って目が合う。


私が変なことを考えていることがわかったのか、その目は少し戸惑ったような影があった。



私はリュウに微笑んでから私たちに頭を下げている木津先生に体を向けた。




「木津先生、こんなことして、すみませんでした。


私に、あなたの人生を狂わす権利はありません。




だからお願いです。
私のことももう少し、見逃していただけませんか…?


お願いします。」





この人もだ。



木津先生も私のせいで

傷ついたんだ。




木津先生に頭を下げていると木津先生が息を飲む音が聞こえた。




「私から幸せを奪わないでください…。」












誰にも、


誰かの幸せを奪う権利はない。




皆、幸せを願う。



故に誰かが傷つく。






ならば私は


何かを犠牲にしてまで






誰の幸せを願う…?







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