チューリップ
あれからどのくらいの時間が経ったんだろう?
気づけば太陽はもうすっかり地に沈んでいて、空は赤い輝きを失い暗闇へと変化していた。
乗っていた電車から降りると、そこは見たことのない町だった。
電車は乗り継いでいないから、せいぜい東京の端っこに来たくらいなのに、現実から遠く離れた世界へ来たように感じる。
「もうちょっと歩くよ?」
少し放心していた私にリュウが声をかけた。
久々に交わす言葉に自然と笑みがこぼれた。
「うん。」
駅を出て開けた景色も、東京都は思えないような田舎。
周りには山や森ばかりで、久々に緑の匂いを体で感じる。
どこにいくんだろう?
2人で歩き始めてから初めて疑問が頭に浮かんだ。
そんな思いが伝わったのか、リュウの繋いでいる手の力が少しだけ強くなった
気がした。
気のせいかな…?
そっと見上げたリュウの横顔は暗くて闇に包まれていても
目がそらせなくなるほど綺麗だった。
まっすぐ前見ている瞳には、リュウの強さが刻まれていた。
私もすこしだけ握っている手に力を入れる。
それは、
私の中の小さな誓い。