チューリップ




所々にある街灯や、姿を見せ始めた月の明かりに映し出された2人の影を見ていた。



形や大きさ、向きは変わるけれど

絶対に離れることはなかった。




影は確かに繋がったまま動き続けた。






無心に動く影を見ていると、



影が止まって、私達の足が止まったことに気づいた。






「ここに、いつか梨華と来たかったんだ。」




穏やかで優しく響くリュウの声で視線をあげると

目の前には



まるで何かの本に飛び込んだような

お花畑…






広い野原の一面ににいろんな花が咲いてるのが暗闇の中でもわかった。




色はわからないけど、この香りはきっとどれも美しい色を付けているはず。





「やっぱ、秋の夜じゃ微妙か…。」



「ううん…すごい、綺麗だよ。」







なんで?



どうして、涙が出てくるの?




嬉しいのに、泣きたくなんかないのに



涙が止まらない。







…もしかしたらこれは

私の想いなのかも




行き場のない私の想いが溢れ出てくるのかな?






リュウ、大好き。

愛してるよ。
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