チューリップ
「高1の春に、何もかも捨てたくなって
何も持たないで
誰にも言わないで
たまたま持ってた小銭で遠くまで行こうとして、たどり着いたのがここなんだ。」
リュウの言葉に顔を上げると、そっと涙を拭ってくれた。
そして、少しだけ目を細めて笑ってからまた手を繋いで奥へと歩き出した。
「何も考えないでただずっと歩いてた。
これからがどうなろうと、もうどうでもよかった。
そしたら、目の前にまるでこの世界のものじゃないような…花の一面…。
思わず足を止めてた。
こんな場所が俺たちの住む世界にあったなんて…
ただそれだけで、俺はまた生きられるような気がしたんだ。」