チューリップ









「高1の春に、何もかも捨てたくなって


何も持たないで
誰にも言わないで



たまたま持ってた小銭で遠くまで行こうとして、たどり着いたのがここなんだ。」





リュウの言葉に顔を上げると、そっと涙を拭ってくれた。



そして、少しだけ目を細めて笑ってからまた手を繋いで奥へと歩き出した。






「何も考えないでただずっと歩いてた。


これからがどうなろうと、もうどうでもよかった。




そしたら、目の前にまるでこの世界のものじゃないような…花の一面…。



思わず足を止めてた。





こんな場所が俺たちの住む世界にあったなんて…


ただそれだけで、俺はまた生きられるような気がしたんだ。」
< 247 / 265 >

この作品をシェア

pagetop