チューリップ
愛おしいと思ってしまったとき、俺の中で何かが動いた。
あの日胸に秘めた誓いがうずく。
「じゃ、俺帰るから。」
俺は梨華から逃げるように教室を出た。
このまま梨華といると、自分じゃなくなる。
2年間の思いが消えてしまう。
少し後ろめたく感じたが、俺は早足で廊下を歩いた。
「待って!!!!」
梨華の呼び止める声がした。
自然と足が止まる。
でも振り向くことは出来ずに俺は廊下に立ち尽くした。
「私、3年6組が大好きだよ!!!」
梨華の思いが俺の心を貫く。
その瞬間、堅く冷たい氷のようになっていた俺の心にひびが入ったのがわかった。