チューリップ
「リュウは、そういうのじゃないよ。
そういうのじゃなくて、なんか生徒として気になっちゃうだけ。」
私が落ち着いてそう言うと、茉莉は少し不満そうな顔をした。
「ふ〜ん。
私にはそれだけには思えないけどなぁ。」
「ほんとにそれだけだよ!」
それから私たちはお互い愚痴を言い合ったり、他愛もない話をしてレストランを出た。
外に出るといつの間にか人の数は少なくなって、大きな通りのレストランとは思えないほど静かになっていた。
驚いて時計を見ると11時56分で、それもそのはずだった。
私たちは2人で私の家に向かった。茉莉が何が何でも私を送ると言ってくれたので、今日はおとなしく送ってもらうことにしてもらったのだ。
「茉莉、遅いのにごめんね。」
「気にしないでってば!これは私が好きでやってることだから!」
申し訳ないけど、送ってもらえるのは正直嬉しかった。
つけられてると思うと普通に家に帰れなくて、遠回りをしたり、何度も振り返ったり大変だったから。
茉莉の横を歩いていると、突然茉莉が足を止めた。
何かに驚いたような顔をして、その後すぐににんまりと笑って私を見る。
「やっぱり今日は遅いから私も帰ろうかなー♪」
「えっ?」
茉莉がいきなり帰ると言うなんて。びっくりだけど、こんな遅い時間じゃ当然か。
「わかった!じゃあまた明日…」
「私の代わりに、紳士に送ってもらいなさい!!!」
茉莉は大きな声でそう言うと、勢いよく前の方を指さした。