チューリップ
残された私は、ゆっくりとリュウの顔を見上げた。リュウは困っているのか、下を向いて頭をかいていた。



(可愛い!)


思わずそう思ってしまった。




「…じゃあ俺らも行くか。」




顔を上げてリュウが言った。


「うん!」


私は少し笑っていたのをバレないように、笑いながら答えた。








しばらく、2人とも何も話すことなく歩いた。


会話と言えば、私が途中で少し前を歩いているリュウに「そこ右だよ。」と指示して、リュウが「わかった。」って言うくらい。





でも、いやな沈黙じゃなかった。




いつもは怖い、道に響く足音も今日は不思議と怖くなくて、むしろその規則的な音は私を安心させた。








「梨華。」



その沈黙を破ったのは、意外にもリュウだった。



「何?」



名前を呼ばれたのに、今さら恥ずかしくなって裏がえり寸前のおかしな声で答えた。




「なんで教師になろうって思った?」







まさかこんな質問がくるなんて思わなかった。






こういうとき偽って教師をやっていることを痛感させられる。




もちろん私が教師になりたかった理由はあるけど、18才だってことを黙っていることを申し訳なく思う。







でも、まだ言えない。
言うべきじゃない。






私は精一杯の誠意を持って答えた。
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