チューリップ
「は!?6階まで階段!?」
私はリュウの叫び声を無視して階段を上る。
絶対、エレベーターには乗れないから。
「梨華待てって!わかったから。」
そう言って追いかけてくるリュウを待って、私達は2人で6階まで上った。
なんだかんだ文句を言いながらも、一緒に階段を上ってくれることがすっごく嬉しくて、心の中で何度もお礼を言った。
「エレベーター付きの意味ねぇし。
ったく、だからそんな痩せんだよ。」
私の部屋の前について、息を切らしながらリュウは小声でそうつぶやく。
「そんなおじいさんみたいなこと言わない!
だからそんな貧弱な体なんだよー。」
私も負け時と言い返した。
リュウは私の言葉にうっすら笑みを浮かべると、すぐに笑みを消して真面目な顔になった。
そしてゆっくり私の頭に手を置く。
私は驚きと恥ずかしさで赤くなった顔を隠すために少し下を向いた。
優しく私の頭に触れている手から伝わる体温が、心地よくて
離れてほしくないと思った。