チューリップ
リュウは私の頭から手を離そうとしなかった。




いつもでは考えられないリュウの行動に、だんだん疑問が胸にわいてきて、顔を上げた。



「リュウ?」




私が名前を呼ぶとリュウは無表情のまま手を戻した。










「リュウ?どうしたの?」



気づけば私はリュウの胸にいて、抱きしめられていた。




抱きしめるその手に少し力が入っていて、さらに私の疑問は膨らむばかり。




リュウは私の質問には答えず、ずっと私を抱きしめた。









『先生と生徒』




私たちの間にある壁が頭をよぎる。




私は先生で

リュウは生徒。




私たちには高すぎる壁がある。








そう思っても

リュウの胸から離れることができなかった。






リュウの温もりが心地いいから?


リュウの優しさが嬉しかったから?





なんで離れたくないと思うのか

私にはわからなかった。







ううん、

わかりたくなかったんだ。
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