チューリップ




どれくらいの時間が流れたんだろう?



30秒?


5分?


10分?





私たちはゆっくりと離れた。



離れて私とリュウにできた距離。




それが私たちにとってのリアル。


なくてはならない空間。








「梨華。」




リュウは優しく私の名前を呼んだ。





今更恥ずかしさがこみ上げた私は声を発することができなくて、首を傾げた。





「ごめんな。」







何で謝るの?



声にならない疑問が頭を駆けめぐる。




私を抱きしめることが、いけないことなの?





私は勢いよく何度も首を振ってリュウを見つめた。






そんな悲しい顔しないで。
< 51 / 265 >

この作品をシェア

pagetop