チューリップ
どれくらいの時間が流れたんだろう?
30秒?
5分?
10分?
私たちはゆっくりと離れた。
離れて私とリュウにできた距離。
それが私たちにとってのリアル。
なくてはならない空間。
「梨華。」
リュウは優しく私の名前を呼んだ。
今更恥ずかしさがこみ上げた私は声を発することができなくて、首を傾げた。
「ごめんな。」
何で謝るの?
声にならない疑問が頭を駆けめぐる。
私を抱きしめることが、いけないことなの?
私は勢いよく何度も首を振ってリュウを見つめた。
そんな悲しい顔しないで。