チューリップ



訳の分からないいらつきが俺の頭を支配する。



犯人に対するいらつきか?


それとも気づかなかった自分に対するいらつき?





そもそも俺は何でこんなに梨華を気にかけてるんだ?


昨日だって、抱きしめたり…






(もう…ごまかせねぇか…)




自分の意志に反してでかくなってる想いに、気づく。




(俺は…梨華を…)









「美山先生に何かあったのですか?」



俺の頭に浮かんだ想いは、突然現れた理事長の言葉によって吹き飛ばされた。



勢いよく振り返ると、眉間にしわを寄せている理事長が背後に立っている。




「あっはい。美山先生がいなくなってしまって…。



前々から嫌がらせわ受けていると聞いていたので、心配になって探しているところなんです。」


「嫌がらせ!?


まさか…」




「理事長、何か知ってんですか?」




及川の説明に、理事長は明らかに動揺している。





理事長はいきなり話しかけた俺に驚きを見せながらもゆっくりうなずいた。
< 58 / 265 >

この作品をシェア

pagetop