チューリップ
及川、陽介、俺、の3人は理事長を見つめた。
なかなか話し出さない理事長に焦りを覚えながらも、俺たちは沈黙を続けた。
「私が知っているのは、美山先生の過去についてです。
美山先生は高校生の時、同級生からいじめを受けていました。」
「うそ…。」
理事長の落ち着いた声と及川の息をのむ音が静かな部屋に響いた。
「きっかけは些細なことだったんです。
でも1度起きたいじめは、簡単におさまるものではない。クラスの全員が美山先生の敵となりました。
美山先生には両親がいないんです。
そのため、相談できる人もいなく、先生にも見放された美山先生は孤独になりました。
そして、ある時事件が起きたのです。」
誰も信じられなくなる孤独感。
自分を取り囲む深く黒い闇。
梨華の過去を聞いて、浮かび上がる自らの過去。
耳を塞ぎたくなる。
逃げ出したくなる。
でも、そんな衝動をおさえても聞かなきゃなんねぇ気がする。
きっと、梨華も同じだったはず。
俺の過去を聞いたとき、同じ思いをしたはずだから…