チューリップ



及川、陽介、俺、の3人は理事長を見つめた。




なかなか話し出さない理事長に焦りを覚えながらも、俺たちは沈黙を続けた。







「私が知っているのは、美山先生の過去についてです。






美山先生は高校生の時、同級生からいじめを受けていました。」



「うそ…。」





理事長の落ち着いた声と及川の息をのむ音が静かな部屋に響いた。




「きっかけは些細なことだったんです。



でも1度起きたいじめは、簡単におさまるものではない。クラスの全員が美山先生の敵となりました。





美山先生には両親がいないんです。




そのため、相談できる人もいなく、先生にも見放された美山先生は孤独になりました。






そして、ある時事件が起きたのです。」









誰も信じられなくなる孤独感。


自分を取り囲む深く黒い闇。




梨華の過去を聞いて、浮かび上がる自らの過去。





耳を塞ぎたくなる。


逃げ出したくなる。




でも、そんな衝動をおさえても聞かなきゃなんねぇ気がする。






きっと、梨華も同じだったはず。



俺の過去を聞いたとき、同じ思いをしたはずだから…
< 59 / 265 >

この作品をシェア

pagetop