チューリップ
赤井さんの行動にリュウは目を見開いて呆然としている。
リュウは赤井さんを押さえつけている手を離して、唇を離した。
「ずっと前から私はリュウしか見ていなかった。
サッカーをやっているリュウも
やめて変わってしまったリュウも
私は全部見てきた。
リュウが大好きだったから…」
リュウが大好き
なぜかその赤井さんの言葉にドキッとする。
なぜか胸が苦しくなる。
私とリュウは黙って赤井さんの話を聞くことしかできなかった。
「リュウが変わってから、私はリュウを前のリュウに戻そうと頑張ったのよ?
毎日、みんながおびえて距離を置くなかで話しかけたり、同じ高校にはいったり…
リュウは気づいていなかったみたいだけど…。
それでもダメだった。
リュウの心は冷え切ったまま、動かなかった。」
「菜々子…」
「でも、もうそれでもいいって思った。むしろ心を閉ざしていた方が、リュウが誰のものにもならなくてすむって…。
なのに何で
何であんたなんかが!?
あんたなんかただの転任してきた担任なのに
2週間しか経ってないのに
リュウの心を開いちゃうのよ…」