チューリップ
陽介はハハハと笑いながら着替え始めた。


陽介が部活とかやってんのは見たこと無いけど、運動神経はいい方で基本的に何でもこなせる。

ってかあいつに苦手なものなんてあるのか?



要領がいいせいか、年が上なせいか、俺はいつも陽介の下で生きてた気がする。


大袈裟かもしれねぇけど、あいつかいなければ俺は今生きていないかもしれない。




「陽介。

俺、今日マジでやるからさ…。」


「うん。」



陽介はそれだけ言って出て行ってしまった。



きっとあいつは俺が言いたいことがわかってんだと思う。






3階の教室の窓から見える空は雲ひとつない快晴で、あの日を思い出した。



梨華が俺の前に現れた日。



あの日も、同じような空を教室から眺めた。




でもなぜか、同じ景色には見えなかった。





誰かに言えば笑われるかもしれない。


でも、俺には全く違う空に思えた。
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