ピュア恋、始めました。
右隣はまた黒木くんだ。
「あれ~ぇ、白崎みゆりちゃんだ〜」
左隣にいる人が話しかけてきた。
ん?、お酒臭い……
「近くで見ると本当にかわいいね…」
そう言うと、私の太ももに手を置く。
こわい。
声が出ない。
「ねえ、このあと一緒に抜けない?」
私の耳元でそう言うと、太ももに置いた手を這わせた。
どうしよ……
怖い。
助けて、。
どうしたら良いか分からずに固まる私。
すると、
「リューヤ先輩飲みすぎっすよ」
さっと立ち上がると、私とそのリューヤ先輩との間にどかっと座る黒木くん。
「リューヤ先輩悪い人じゃないんだけど、酔うと見境なく口説くんだよな。ごめん」
小声で私に言った。
「だいじょぶだよ。ごめんね」
私が黒木くんに謝った直後、
彼は私の手をつかみ
「俺、白崎さんと合コン抜けるんで」
ざわざわとどよめく
そう周囲に宣言すると、
「行くぞ」
私だけに聞こえる大きさで言った。
「え、???ええええ!!!??」
手元にあった荷物をなんとか持って手を引かれるまま部屋を出る。
ずんずんと進みカラオケ屋を後にする。
「あ、あの!黒木くん。私、お金払ってない」
この期に及んでお金の心配をする私は、傍から見たら滑稽だろう。
「もう払ってある。合コンって男が奢るものだって先輩が言ってた。」
「ごめん、ありがとう」
私の手を引いたまま立ち止まった黒木くんに私は言った。
「別に。……俺が…嫌なだけだったから」
真っ直ぐそのまま前を向いて私を見ずに言う。
さぁっと風が黒木くんの横顔が見えた。
こんな綺麗な顔してたっけ…??
不覚にも胸の奥がきゅんと鳴った。
「あ、そうだよね!隣であんなことされてたら気分悪いもんね…」