ピュア恋、始めました。
少し気まずくなった。
間が持たない。
どうしようか考えているうちに電車がきた。
車内は空いていて、私たちは席に座った。
どうしよう。
何話せばいいんだろう。
このまま話さなかったら、つまらない奴って思われちゃうよね。
チラッと横目で黒木くんを確認すると、彼はなんだか眠そうだった。
話しかけるのはやめよう。
私はひたすら目の前の窓に流れる景色を見ていた。
どれくらい私は景色を見ていたのだろうか。
しばらくして私の降りる駅に着いた。
スヤスヤ気持ちよさそうに寝ている黒木くんを起こすのは申し訳なかった。
同じ駅で降りるわけじゃないけれど、黒木くんだってもう少ししたら降りなくてはいけない。
ここは起こしておいた方がいいのかもしれない。
意を決して肩を揺らす。
「起こしちゃってごめんね!私ここで降りるから。今日はありがとう」
んん、と寝ぼけた声を出す黒木くんに私は言った。
「ん、、わかった。気をつけてな」
バイバイ、と小さく手を振って私は電車から降りた。
高校時代あれほど程遠くて縁のない人だと思っていた同級生と再会して一緒に電車に乗るなんて考えてもみなかったことだ。
もう隣に黒木くんはいない。
まるで夢から覚めたような気分になった。
だって、電車から降りたら
私たちが一緒にいたことを証明する術はないのだから。