Be Girl-翼のゆくえ-
朝を迎え、目を覚ましたナナミは、横でイビキをかいて眠るカズオの唇にそっと自分の唇を重ねた。

そしてしばらく、カズオの顔をじっと覗き込んでいた。

「ありがとう…」

ただ一言、そんな言葉を漏らし、ナナミはカズオが目を覚ますまで見続けていた。






「そういう事だったんだね~」

リンは何かに納得したように、ニヤニヤしながらナナミを見つめた。

ナナミは少し照れたような顔をして笑った。

この日が、私達とカズオの初対面だった。

私とリンには、冴えないただのサラリーマンにしか見えなかったし、挙動不審具合は相当なものだった。

けれど話をすればするほど、ナナミの事を真剣に考え、話しに聞いた通りの人である事がわかる。

そして何より、ナナミの幸せそうな優しい笑顔が印象的だった。

この日、一人の友人を失った私達は、逆に三人の結束が固まったような気がしていた。

何かを得るためには、何かを失わなければならないのかもしれない。

『仕方ないことだから!』

そう自分に言い聞かせながら、私はハルカの事を必死で頭の中から消し去ろうとしていた……
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