イケメン女子になりたいッ!
☆
カフェ『姫鏡』。
学校の裏にある、控えめな憩いの場。
放課後、私は成海くんの言う通りにここへやって来た。
特別オシャレな訳では無く、木の茶色と観葉植物の緑で纏められた大人っぽいカフェだ。
〇タバやサー〇ィワンを好む学生とは全くと言っていいほど会わない。
店長は人生経験豊富なオジサマだし、お客さんも疲れを癒しに来たサラリーマンや控えめな女性数人だけ。
ここなら落ち着いて指導を受けられる!
手動の扉を押して、私はそこへ入った。
カランカランと軽やかなベルの音が店内に響く。
「いらっしゃいませ」
挨拶してくれた店員さんにお辞儀をして、私はキョロキョロと周りを見る。
「野々市さん、こっち」
窓際の隅の二人がけテーブル席で、先に来ていた成海くんがカップを片手に手を振る。
私は向かいの椅子に腰かけた。
「お待たせしました、成海くん!それで、早速指導……」