イケメン女子になりたいッ!










カフェ『姫鏡』。

学校の裏にある、控えめな憩いの場。

放課後、私は成海くんの言う通りにここへやって来た。

特別オシャレな訳では無く、木の茶色と観葉植物の緑で纏められた大人っぽいカフェだ。

〇タバやサー〇ィワンを好む学生とは全くと言っていいほど会わない。

店長は人生経験豊富なオジサマだし、お客さんも疲れを癒しに来たサラリーマンや控えめな女性数人だけ。

ここなら落ち着いて指導を受けられる!

手動の扉を押して、私はそこへ入った。

カランカランと軽やかなベルの音が店内に響く。

「いらっしゃいませ」

挨拶してくれた店員さんにお辞儀をして、私はキョロキョロと周りを見る。

「野々市さん、こっち」

窓際の隅の二人がけテーブル席で、先に来ていた成海くんがカップを片手に手を振る。

私は向かいの椅子に腰かけた。

「お待たせしました、成海くん!それで、早速指導……」
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