こいつ、俺の嫁。
テツに憧れてバレーを始めて、でも頑張りすぎて怪我をしてやめてしまったと桃子ちゃんは言っていた。
きっとテツに少しでも近付きたくて、いつかテツに見てもらいたくてたくさん頑張ったんだと思う。
怪我をして大好きなバレーが出来なくなって、テツに見せることもできなくて絶対悔しかったよね。
でも桃子ちゃんの頑張りはどこかできっと誰かが見てるから。
今まで桃子ちゃんが頑張ってきたことは無駄じゃなかったと伝えたくて、脅してまでテツに言わせた。
あの時の子が桃子ちゃんだと気づいてよかった。
「…わ、私ずっと……鉄也センパイに自分のスパイクを…見て、もらいたくて……っ
まさか見てもらえてた……なんて……嬉しい、です……っ」
大きな瞳から溢れる涙を隠すように桃子ちゃんはあたし達に背を向けた。
鼻をすする音が体育館に響く。
「あ!テツが桃子ちゃん泣かしてる!」
「…あぁ?」
「ひっ!」
突然乱入してきたのは成宮先輩。
挑発したくせにすこぶる機嫌の悪いテツを目の前にビビってる。
空気読まないからですよ先輩。
ボールを成宮先輩に投げつけながら成宮先輩を追いかけ回すテツ。
それを見て笑う桃子ちゃんの目にはもう涙はなかった。
インハイ予選まであと2週間。