こいつ、俺の嫁。
「…お前さ、俺が今すげー喜んでんの分かる?」
「わ、分かんない」
テツはあたしを背後から抱き締めているから、テツの表情は見えないし。
ましてや心の声が聞こえる超能力者でもない。
テツがどう思ってるかなんて分からないよ。
「…何回も何回も"俺の嫁"つっても澪は嬉しがることなくすぐ否定するし、せっかく俺に会いに来てもすぐ帰ろうとするし、2人で飯食ってたらお前は俺以外の男の話をし出すし。
最近澪が麗センパイと話してると拗ねたような顔してるからもしかしたらってちょっと仕掛けたら、澪は俺に嫉妬してくれて、それで澪は俺のこと好きなんだと思ったら……それがすげー嬉しくて」
肩口にテツの額が乗せられた。
テツの吐息が首筋にかかってくすぐったいけど、あたしの頭の中はそれどころじゃなかった。
俺の嫁ってずっと言ってたのは冗談じゃなくて、本気だったってこと?
あたしが好きだから、そう言ってたの?
しばらく抱き締められたまま時間が過ぎていく。
やっといきなり床に足で着地出来たと思ったら、肩を掴まれてテツの方を向かされる。