溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「随分、想いを込められてましたけど、何をお願いしたんですか?」
「今、隣にいる女性が本気で恋をする、その相手になれますように」
「……」
「黙らないでよ。聞いたの、そっちでしょうが」
「そうですけど……まさか、だったので」
「仕事のことだと思った?」
ええ、と答える間、社長は両手をポケットに入れて体を反転させ、柵にもたれた。
「桃園さんと別れてくれないかなって、本気で想ってるんだよ。俺って結構性格悪いから」
「人の恋をなんだと思っているんですか」
「白埜さんこそ、俺の想いをなんだと思ってるの?」
「社長は、冗談でプロポーズしたりする方ですから」
「あぁ……なるほどね。つまり、本気が伝われば、ちゃんと考えてくれるってことでしょ?」
「それは……まぁ」
断るという選択肢に変わりはないだろうけれど。
風上にいる彼から、清潔感のある香りが漂ってくる。
行き交う人たちは社長の姿を見つけるなり、有名人を見た時と同じ反応をしていくけれど、彼は全く気にしていない。
来週、また記事になったらどうしよう。私の顔が隠された写真が掲載されるかもしれない。そうとなれば、桃園さんとの関係があるのにと、また周りから詰められるだろうな。