溺甘プレジデント～一途な社長の強引プロポーズ～

自分を許してあげなさい

　葛城社長のことが好きになったわけではない。告白されたからってなびくほど軽い女でもなければ、適当な気持ちで桃園さんといるわけでもない。

　だけど、少しだけ後ろめたさを感じるようになった。
　本当はデートをするためだったと聞かされたうえに、正式な告白を受けてしまったら、桃園さんが知っている理由とは異なるからだ。

　かといって、それを打ち明けようとも思わない。
　彼らは互いに重要な取引先でもあるし、葛城社長に至ってはブルーメゾンを起業した当初から、桃園さんに色々と話を聞いて学んだところもあるからだ。
　私１人の言動でそれが壊れてしまうのか、どれほどの絆があるのかは本人同士じゃないと分からないけれど、葛城社長は桃園さんを苦手に思っているから、意外とあっさり跡形もなく……。



「また来るんでしょ？ミドリーヌ」

　ペンを片手に資料のチェックをしていると、乃利子が話しかけてきた。
　ランチの誘いなのか、里美と春華も一緒に来ていて、よく知っていると彼女の情報通を称えると、自慢げな表情が返された。



「当然。葛城社長が本気かどうか、見分けられるいい機会だもの」

「別にどっちでもいいんじゃないの？つき合ってないかもしれないし」

　キスはしてたけど、つき合っていないと本人から聞いたとは言わないでおこう。
　また騒ぎを増やしたところで、仕事効率化が図れるわけではない。