溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「よくないの。全く知らない誰かに盗られるならまだしも、なんか納得いかないんだもん」
「誰が相手でも納得できないんでしょ?」
「千夏は平気なわけ?社長が他の女の彼氏、もしかしたらいずれは旦那になるんだよ?」
……前までは迷うことなく平気だと答えていただろうな。
今はほんの少しだけ、引っかかりができてしまった。彼の告白が本気だと知ってしまったから。
「平気っていうか、なんというか」
「あれ?千夏なら別に何とも思わないって言うと思ったのに」
「……ランチ、今日はパス。これ急ぎだから」
こういう時、大人は楽だ。仕事が忙しいって逃げられるから。
ああでもないこうでもないと話しながら、広報部のフロアを出ていく彼女たちの背中をみつめる。
あんなふうに堂々と誰が好きだとか言えたなら、きっとそのほうが楽なんだろうな。