溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


「屋上、行ったことある?」

「ありませんが……この時間は閉まっているかと」

 でも、エレベーターのボタンはきちんと点灯して、私と社長を運んでいる。


「このビルのオーナーですから。時間外でも自由に出入りできる特権、こういう時に使わないとね」

 にっこりと微笑む彼が、落ち込んだ私の気持ちに染み入るようだ。元気を出せと言われたわけじゃないのに。



 到着した屋上階は、営業時間内の間は庭園として解放されている。その情報だけは知っていたけれど、足を向けたことはなかった。


「綺麗でしょ?時々、ここに来てぼんやりするのも俺の趣味」

「そうなんですね。社長の趣味がまた1つ分かりました」

 すーっと息を吸って吐き出せば、悶々としていた心が澄み渡るよう。桃園さんとの恋に終止符を打つには、こんな場所も悪くない。


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