溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
私、社長が……好き
8月。猛烈な暑さをしのぐ術を、日々考えながら過ごすのはいい加減慣れてきた。とはいえ、幼いころはもう少し自然な暑さだったはずなのにな。
あ、日焼け止め買っておこう……。お昼休みにネットショッピングを済ませる。
隣の席では乃利子たちがいつものごとくお喋りに夢中で、その話題は人気の俳優だったり、ファッションや流行、葛城社長のこと。
そのループに飽きないのかと思うけど、楽しそうにしている表情を見る限り、つまらなくはないのだろう。まさか、私が社長と誰にも言えない秘密を作ってしまったとは思いもしないはず。
先週、あろうことか振った男性の胸を借りて泣いてしまった。
葛城社長がイヤホンをしてくれていたから、声は聞かれていないだろう。
抱きしめられていたから、泣き顔を見られてもいない……と願いたい。
気まずいのだ。多少なりともそう感じるのは当然だと思うけど、この場合はなんと言えばいいのか。
振った男性の胸で泣く女っていうのが、個人的に好ましくないから始末が悪い。