溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「他社を選ぶのは、リスクが伴いますね。だけど、ハイリターンもあります。新しい反応が見られれば、購買層も広がるでしょう。私に特に興味を持たなかった人が、記事を読んでブルーメゾンを知って、商品に価値を見出してくれるかもしれません。
フラッグ出版とはライバル関係にあるところを狙ったのも、そういう都合です。桃園さんが良い思いをしないだろうというのは織り込み済みですし、裏切られたと思われても仕方ないでしょうね」
社長の仕事に対する考えや想いが、このビルにいる誰よりも深く重く、ブレずに未来を見ているのは当然のことなのだけど、言葉にされると圧倒される。
「こちらもビジネスです。ずっとこれから先も1社に頼っていては、先の灯りは見えなくなるばかりだよ」
社長室を後にしながら、もしかしたらと思い上がっていたのが恥ずかしくなる。
何を期待していたのかと自問すれば、勘違いも甚だしい自分の都合のよさに呆れてしまった。
だけど、勘違いしたくもなる。
あんな優しさを知ったら。誠実そうな想いを告げられたら。