溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「ブルーメゾンを興した頃、私はまだ学生でした。そんな私に誰よりも早く注目して、社会や経済、起業するということ自体について、様々な意見や経験談を話してくださったのは桃園社長でした。

 貴重な人脈をご紹介していただいたり、方々で私の名前を出してくださったり、本当に感謝しているんです。でも、今の私がありがたかったと思っているのは、伝えてもらった言葉です」

「……大切なことを言った覚えはありませんよ」

「敵を知るには、己を知ること。次に敵に飛び込む力と勇気を持つこと。そう仰ってくださったんです」

「それが意味を成したと?」

「敵を知るために、飛び込んでみないと分からないこともあるんですよ。それから、自身を知るにも」



 沈黙のなか、社長と桃園さんが視線だけで会話をしている。

 かすかな音さえ許されない緊張感に晒されていながらも、葛城社長が掴んでいてくれるそこから伝わる温もりに守られている気がした。



「白埜さん、またそのうちお世話になりますよ」

 あんなに素敵と思っていた微笑みに罠を見た。私は膝から崩れ落ち、ソファに座った。


「大丈夫だから。俺は、あの人に負けたりしない。何があっても、ブルーメゾンは俺が守る。俺じゃなきゃ守れない」


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